もう10年前になります。
薄暗い不思議な世界の木版画を観ました。
屏風になっていて、たしかそれほど高さのある作品ではなかったのだけれど、落とした視線の先に、炭のような藍のような色の少ない物語がありました。
それは2005年のLINK展に出展された作品で、作者さんとはその時からの縁になります。
思い出の作品は、今年の個展にお邪魔した時、ポートフォリオに載っていた写真を観て思い出したのです。
あ!この作品!
と驚いて、その後観た時の感覚が蘇りました。
LINK展に参加している作家仲間で集って、その作家さんの個展会場へ連れて行ってもらいました。
個展とは質問責めになると知っていつつ、あれこれ聞いてしまいましたが、真面目に丁寧に答えてくれます。
芳名録の話になった時、私は久しく個展をしておらず、誰が来たか、何人来たかとは恐ろしいことをしないといけないですね、勇気がいりますね、と言うと、それはありがたいだけで怖くはない。それよりも、誰もいない時に、完成した作品と黙って向き合う時間が怖い。そう言われました。
今年のLINK展のテーマ
「I was there.」
どこから来て、どこへ向かうのか。
このテーマも、自分と向き合う時間が必要だろう。こうして俺たち今作品と向き合い、自分と向き合い、苦しんでいるんじゃないのかい。
そう。おっしゃる通り。今年は特に大変苦しみました。でも、手塩にはかけましたが、さらりと描きました。さらりと観て欲しいんです。
今までは、前に前に、みんなに観て欲しい!そんな炎が燃えていましたが、今の私、たった今の私の穏やかな温度と、作品の温度が同じになるよう、苦心しました。
その分、これ以上は手を加えない、これにて完成、そう思えた時、感じたことのない「次の私こんにちは」現象がおきました。
今年も拙い作品です。でも誰もがそうであるように、私のある限りをろ過して描きました。観て頂きたく、観ていただくのが怖く、それは作品を出す前の作家が抱えるアートブルーです。
でも、ひとりぼっちであんな長く思いつめたけれど、それを観てもらうなんてやっぱり度胸がいるけど、あの個展会場で、作家さんは「俺たち」という言葉を使いました。
俺たちが、今やらなあかんよな。
俺たち。ニャンもだ。
芸術とか、私の中とかにいる、魔物と向き合った、俺たち私たちの展覧会が、はじまりますよ。

0 件のコメント:
コメントを投稿