ポツポツと頬に雨がかかる出勤道。
お天気予報では晴れのちくもり、どうやら今時分ごきげんが悪いみたい。特に気にもせずスタスタと駅へ向かう。
もくもくと仕事をこなしていると、いつものように隣のビルまでおつかいを頼まれる。封筒に入った書類をお届けするだけのいつものおつかい。
ビルのエントランスまで降りて行って、シトシトと本格的に雨が降っていることにはじめて気がつく。
しまった、傘を持っていない!
しかも急ぎでお届けの書類。
瞬間の判断で、羽織っていたカーディガンを封筒にぐるっとまいて、抱え込んで走り出す。隣のビルまでは30秒。はやくはやく!
受付につく時にはまつげに水滴。肝心の封筒を確認すると、残念なことに雨粒の跡が…。ほんの少しの跡だけど紙製の封筒はまこと水分に弱い。
ほんのり濡れ鼠がほんのり濡れた封筒を申し訳なさそうにお渡しする。
傘をさせばいいじゃないの…。
そんな表情をされた気がして、謝りたい気持ちに。
今だやまぬ雨の一日。次のおつかいを頼まれる。本屋さんへ雑誌の購入。今度こそ、傘をさしてでかけるぞ!と、勇気を出して「すみません。傘を貸してください!」とお願いする。忘れてきちゃったんだね、と笑われつつも、こころよく貸していただける。
慣れない男ものの大きな傘をさして本屋さんへ。
しかし、よく考えたら傘はコンビニで買える。帰り道に気がついて、ビショビショの傘を返すのも申し訳ないしと、ビニール傘も購入。
重たい雑誌数冊と、大きな傘一本、お財布を抱えながら、ピトピトと音のするビニール傘に身を潜らせてなんだかいろいろうまくいかない淋しい日だなとつぶやく。
そもそも今朝、雨に気づいた時に一度家に帰って傘をもってくればなんの問題もなかったのに。
自分は多少濡れても構わないと思ってしまった。
でもそれは自分であって、勤めて何かを頼まれる可能性のある人は、いつも他人の身になって考えを巡らせないといけない。
自分でデザインしたものや、買ったものでも、それはいつも誰かのためのものだと意識していないとこうなってしまう。そんな当たり前のこともまだわかっていないのか。
考えはぐるぐると私にまとわりついて離れない。
雨音が少し強くなった気がして、ふいにビニール傘越しにそらを見上げる。
雨の日なのに、想像以上に空が明るいことに気づいて、はっとする。
私、ずっと下を向いて歩いてた。
重たい荷物を抱えなおして、背筋を伸ばして、そんな自分がなんだか可笑しく思えて、もう一度、透明な傘の向こうのそらを見上げて、微笑んだ。

0 件のコメント:
コメントを投稿